井上孝司さんの「図説鉄道配線探求読本」を購入しました。鉄道の配線と列車の運行について、実際の配線図を示しながら、その意味や長所短所を解き明かしています。
鉄道の配線は、その場所の地形、利用者の多寡、予算の制約などさまざまな要因で必ずしも理想の配線になっていないことが多いです。この配線がこうなっていればもっと便利なのにとか、逆にこうなっているからスムーズな運行ができているとか、そういうことを配線図を用いて解説しているのが本書です。
本書で取り上げられている配線の大半はすでに私の頭に入っていますが、その中で目を引いたのが地下鉄の連絡線の配線図です。地下鉄では車両の検修や入出庫の関係で営業列車が走らない連絡線があります。地下にあるので認識しづらい連絡線を本書でいくつか示してくれていてとても参考になります。札幌、大阪、名古屋、東京メトロなどが具体的に示されています。
マニア向けの著作ではありますが、それぞれの配線について分かりやすくかつ奥深く考察しており、おすすめいたします。
なお本書は神保町の書泉グランデで購入しましたが、以前は鉄道フロアが6階と5階の一部でしたが、5階のみに縮小されていました。
時刻表の3月18日ダイヤ改正号を購入しました。今回の目玉は相鉄・東急の新横浜線だと思いますが、私鉄のトピックなので時刻表での取り上げはわずかです。同じく3月27日に延伸開業の福岡市営地下鉄七隈線は全く取り上げられていません。
JR関連では大阪駅のうめきた新線に関するものが私にとっては最大です。従来の梅田貨物線が地下化され大阪駅にホームができるので早く乗りたいと思っています。
続いて上越新幹線がE7系に統一され最高速度が275キロに引き上げられることも見逃せません。東北新幹線に比べて最高速度が見劣りしていたのでうれしい話題です。
また東海道新幹線の新横浜始発6時ちょうどのひかりが小田原で後続の週末運行ののぞみを待避することになったのも見逃せません。今までは新大阪まで追い付かれることがなかった韋駄天ひかりですが、新設された新横浜始発6時03分ののぞみに抜かれるようです。小田原で追い越すくらいならば新横浜の発車順を変更すればいいと思いますがそうもいかない事情があるのでしょう。
それとこれは今まで気が付かなかったことですが、黄色いページの特集欄に一部私鉄の全駅時刻表が表示されていて、今回は上田電鉄と江ノ電なのですが、そこに配線図も表示されていました。乗り鉄の中には配線図を調べて乗ったことのない待避線や側線に乗りたいと思う人もいるのでそういった人にはうってつけです。
宮脇俊三さんの時刻表2万キロでも「新しい時刻表が発売になるとその晩は何時間も読みふける」とありますが私も同じです。いろいろ興味尽きないダイヤ改正号ですが、もっと読み込んでいきたいと思います。
小牟田哲彦さんという方の「宮脇俊三の紀行文学を読む」という著作が中央公論新社から発売されました。
宮脇俊三さんは「時刻表2万キロ」などの著作で知られ、鉄道旅行記を紀行文学のレベルにまで高めた作家としてこのブログでもたびたび取り上げています。私も宮脇俊三さんに触発され、国鉄全線完乗を目指し、また旅行記を書くようになりました。宮脇俊三さんは2003年にお亡くなりになりましたが、没後も人気は衰えず、作品の復刻や特集が組まれたりしています。
この「宮脇俊三の紀行文学を読む」は宮脇俊三の作品を読み込みその魅力を改めて伝えるものです。取り上げている作品は時刻表2万キロ、最長片道切符の旅、台湾鉄路千公里など10作品です。
それぞれの作品の魅力は実際に読んでいただくのがいちばんですが、共通して言えるのは、写真なしでも伝わる風景や情景描写の妙と淡々とした抑制された文体です。デビュー作からすでに40年以上を経過してなお読み継がれる作品は時代を超えた普遍性を持ち、鉄道紀行文学において、氏を上回る人物が出てこないのも無理からぬことです。
宮脇俊三さんの著作を読みながら、小牟田哲彦さんの本著を読めば、宮脇作品の魅力がより伝わると思います。皆さまもぜひ「宮脇俊三の紀行文学を読む」をお読みいただければと思います。
時刻表の2022年3月ダイヤ改正号が発売されました。今回は新線の開業もなく変化の少ない改正ですが、それでも細部には変化が生じています。
私はその中でJR北海道に注目しています。札幌・釧路を結ぶ特急おおぞらで使用されているキハ283系が引退します。振り子式特急で最高時速130km、札幌・釧路間を4時間を切って走行していました。その後車両の整備不良などで火災を起こすなど走行安全性に懸念が出たことなどから最高時速を110kmに落として運行していましたが、車体を傾けてカーブをダイナミックに走行する姿はで印象的でした。また先頭車両の貫通ドアにはガラス張りの「展望スペース」があり、前面展望が楽しめるのも魅力でした。最近は後継のキハ261系への置き換えが進んでいましたが、今回のダイヤ改正により全車両引退となりました。
また道東地区でキハ40系が引退するになりました。私が乗り歩きを始めた1980年代に投入が進んだ車両で、かつてはローカル線に乗ると必ず朱色のこれがやってきたものです。鋼製車両でどっしりと安定感がありました。特に北海道のは空気バネ台車で乗り心地も良かったです。空いているとボックスシートの前の席に足を投げ出して座るのが私にとって最高のぜいたくでした。今後は新型の電気式ディーゼルカーH100形に置き換わる予定でそれはそれでうれしいことですが、若い頃から慣れ親しんだ車両も淘汰が進み寂しいものがあります。
うれしい話題では学園都市線に開業する新駅ロイズタウン駅です。近くに工場を有するチョコレートのロイズが当別町とともに費用を負担してできた駅で、観光スポットとして発展が期待されています。
古い車両が一掃され、新駅が開業する今後のJR北海道に期待したいと思います。
大相撲で行司を勤める木村銀治郎さんが書かれた「大相撲と鉄道」という本が交通新聞社から出版されています。木村さん自身も鉄道好きで、駅弁の掛け紙収集が得意分野のようです。
大相撲の行司は、日本相撲協会内では行司以外に様々な役割りを分担していて、木村さん自身は「輸送係」として、移動手段の選定、手配を取り仕切っています。
大相撲は年6回の本場所以外にも地方巡業が年4回あり、数百人単位になる力士、親方、協会関係者の移動を一手に担っています。
列車の選定や座席の割り振り、駅弁の手配など多岐に渡ります。新幹線を利用する場合は定期列車のひかり号を利用することになっていて、大相撲の力士といえども、1人1席となるので新幹線のB席には小柄な力士や行司などが入るように席割りを決めるようです。
臨時列車を仕立てることもあり、弘前から名寄まで24系寝台車と14系客車10両で青函トンネルを抜けたこともあるようです。
いろいろなエピソードが詰まっていて、大相撲と鉄道のつながりはもちろん大相撲の世界を知ることもでき、興味ある本でした。皆様もぜひご一読ください。
神田書泉グランデで購入した「鉄道史学」という論文誌です。1冊1,650円となっています。執筆者は大学の先生方が中心で本誌では10本ほどの投稿、講演会記録や、昨年他界された青木栄一先生、小山徹先生の追悼文などが寄せられています。
本誌を購入したのは、北海道の植民軌道・簡易軌道に関する報告が出ていたからです。2019年度の大会が釧路で行われた関係のようです。その報告自体は特に目新しいところは無かったのですが、併せて収録されているJR九州初代社長の石井幸孝さんの基調講演が興味深いものでした。『北海道の鉄道の「危機」と未来ー国鉄改革の評価と課題ー』と題するもので、JR北海道の経営改革に関して持論を展開されています。鉄道会社の収益はその地域の人口密度によって決まり、1㎢350人を超えると黒字になり、それを下回ると赤字になるというものです。JR九州はそれをわずかに下回るので鉄道部門は赤字だが、多角化で会社全体では黒字になりました。
一方JR北海道は人口密度が68人なので、いくら頑張っても黒字になり得ないのです。札幌圏での不動産業務などの経営多角化、北海道新幹線での物流輸送などを提言されるとともに、経営安定基金の見込み運用益相当の財政支援、国防上の理由による根室、釧網、石北、宗谷本線への財政支援を要請されています。北海道の特殊性、重要性を踏まえて国として支援していく必要性があるというものです。そもそも自助努力ではどうにもならないというが結論です。
JR北海道の再建案の数字的な裏付けは乏しいのですが、主張の全体的な方向性はその通りで、長大なネットワークを維持する必要があると国民が望むならば、財政支援は不可欠だと感じました。
2021年3月13日改正予定の時刻表を購入しました。ダイヤ改正号の魅力は増発やスピードアップ、新線開業、新車投入ですが、そういったものがなく、特急湘南やN700Sで運転される新幹線が増えること程度が大きなトピックで、コロナの影響を反映して、減便や集電繰り上げなど寂しいダイヤ改正号となっています。
そんな中、唯一ダイヤ改正号らしい話題は、東北・上越新幹線の上野・大宮間のスピードアップです。周辺の騒音問題に配慮し、1985年の開業以来時速110km運転だった同区間が時速130kmに引き上げられ、所要時間が1分短縮されます。1分くらいでは大したことはないと思われるでしょうが、並走する埼京線通勤快速とのバトルでは、今までは抜きつ抜かれつのデッドヒートを演じることもあったのですが、今後は速度差が30kmもあるので横綱の貫録を見せてあっという間に抜き去る感じになると思います。たかが1分、されど1分です。ダイヤ改正の日が楽しみです。
先日の日経新聞に「富士山登山鉄道」の記事が出ていました。富士スバルラインに路面電車を走らせ、登山客の便を図ろうというものです。世界遺産に登録以降、富士山を訪れる観光客が増えているので、それを打開しようというものです。実現へのハードルは高そうですが、うれしい構想です。
ところで今から30年近く前の宮脇俊三さんの著作で「夢の山岳鉄道」というのがあり、その文庫版が1月にヤマケイ文庫から刊行されました。今から30年も前の著作が今だに文庫化されるとは宮脇人気は衰えを知りません。
山岳観光地への足を鉄道にシフトし、環境負担を軽減しようとする空想の鉄道計画です。本書では日本のみならず外国も含めた16の事例について、宮脇さんの計画が展開されています。路線のルートやダイヤ、車両の編成、運賃設定など具体的な計画が示されています。
その中で富士山への鉄道についても触れられています。宮脇さんの計画では、富士スバルラインを鉄道専用として単線の線路を敷き、余分なスペースは樹木を植えて自然に返すというものです。急勾配区間はラックレール方式で登ります。もちろん「夢の山岳鉄道」ですから、細かいところを付けば計画の甘さはありますが十分に楽しめる著作です。
本書で示された16の計画案はいずれも実現していませんが、それでもこの富士山登山鉄道のように動き出している構想もあるので今後が楽しみです。
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