代行輸送2題
1日に2件の代行輸送にお世話になるという貴重な経験をしました。今日はその話です。
仙人秘水製造工場見学会に参加したあと、その晩は宮古に宿泊した。宮古発6:35の列車で茂市まで行き、岩泉行きの一番列車に乗るためだ。岩泉線は23年ほど前に乗ったきりご無沙汰なので、近くへ来たついでに再訪問しようと思ったからだ。
8月24日朝の天気予報では東北地方は午後は大雨とのことだが、ホテルから駅へ向かう道ではまだ小降り。宮古発6:35の山田線川内行き列車で発車を待つ。ところが定刻になっても発車する気配がなく、しばらくすると陸中川井~箱石間で落石があり、運転を見合わせているとの車掌のアナウンス。その後駅員がやってきて、「皆さん、どちらまでいかれますか」とひとりひとり聞いて回った、と言っても乗客は私を含めて4人しかいなかった。全員が岩泉まで行く客であった。すると「タクシーで茂市まで行ってください、そこから岩泉行きに乗り継いでください」とのこと。駅員に誘導され、タクシー乗り場で1台のタクシーに乗り込む。この間約10分ほどの話。ずいぶん手際がよい。日曜の朝で乗客が少なかったかもしれないが、東京ではこうは行かない。タクシー代はJR持ち。
6:48に宮古をタクシーでスタート。客は60代くらいの女性、同じく60代くらいのハイカー風の男性、私、30代くらいの男性でこの男性は明らかにテツだ。お互い会話はないが、特に文句をいう風でもない。タクシーの運転士は「よくあることだから」と慣れた感じ。タクシーはほぼ山田線と平行して国道を行く。渋滞もなく快調に進む。
タクシーの運転士も同じ疑問を持っていたのだが、山田線の落石区間は茂市より先なので、少なくとも茂市までは列車を運行すればよいのにと思う。それともう一つは、我々は宮古から乗車したからよかったものの、宮古・茂市間には3駅あり、いずれも無人駅で、これらの駅から乗車する予定の客はどうなったのだろうかという疑問。何らかの形でフォローがあったのだろうか。
タクシーは7:08分に茂市駅着。駅員の誘導を受けて、岩泉線に乗り込む。列車は7:09に発車。定刻より8分延発となったが、その後の予定には特段影響はなかった。ハイカーと思った男性はその後の行動からテツと判明した。
もう1件は、その日の午後、気仙沼線での話。岩泉線を乗り終えて、次の目標は気仙沼線である。この線も24年くらい前に乗ったきりなので、再訪しようと考えていた。気仙沼発15:50の快速南三陸で仙台までいくことになっていた。ところが発車時刻になると、対向列車が遅れているので到着しだい発車するとのアナウンス。松岩~大谷海岸で大雨による徐行を行っているらしい。定刻より7分遅れで出発。この列車も同区間を徐行したことにより途中駅の遅れは15分に拡大した。仙台での新幹線への乗り継ぎ時間は21分しかないので、これ以上遅れると困る。
そんな状態で停車駅ごとに遅れを気にしていたのだが、16:50、志津川~柳津間を走行中に、石巻線が大雨で運転を見合わせており、この列車も前谷地で運転を見合わせるとのアナウンス。こうなると予約してある新幹線へ乗換えができるか否かより、今日中に家まで帰れるかということが心配になってきた。柳津~陸前豊里間を走行中に「バスを手配することになったので、これから人数の確認に行く」とのアナウンス。そして、各車両ごとに車掌が回ってきて、前谷地から先、仙台方面に行く人と石巻方面に行く人を挙手により人数を確認した。皆、まさにバスに乗り遅れまいと大きく手を挙げている。なんだか小学生に戻ったような気分になってきた。バスの手配には1時間程度かかるとのこと。
前谷地には17:20に到着。本当にここで運転が休止になった。雨の状態はと言うと、確かに降りはちょっと強いかなといった程度で運転見合わせるような集中豪雨というわけではない。もちろんJRの雨量計が設置されているところでは規定の雨量を超えているのだろう。
バスは3台用意されることになり、17:40分には小型の30人乗り程度のバスが2台到着した。地元の小規模の観光バス会社であろうか。手配から約1時間でバスが到着するのは、あらかじめ災害対応で出動待機でも出ていたのだろうか。アナウンスでは3台全部が到着してからバスに誘導するとの話。来たバスから順次乗せるという方法もあるだろうが、早い者勝ちになって収集がつかなくなるから、賢明な選択だろう。災害時のマニュアルにそうあるのかもしれない。
しかし、ここから3台目が来るまで時間がかかった。結局18:10に全台そろい、バスへの乗換えが始まった。乗客は全部で80名くらいいた。3台目のバスはJRの大型観光バスで、客の多くはこのバスに乗ろうとしていた。たしかに見た目も立派で快適そうだったが、私は小型のバスに狙いを定めていた。小型のほうが小回りがきくだろうし、スピードもでそうな気がしたからだ。結果としてこの選択は正解だった。
18:20前谷地駅を出発。狭い駅前を左に曲がり、またすぐ右に曲がり、小型バスはてきぱきと走る。国道に出てからもその走りはすばらしかった。私はシートベルトをしっかり締め直した。雨の降りは少し強くなってきたようだがバスはお構いなしに快走する。もっと時間がかかるかと思っていたが、18:40小牛田着。20分で着いてしまった。バスの代行区間はここまで。小牛田駅は新築されたらしく真新しい駅舎だった。後続のJRバスは後ろにはいなかった。
ここからは東北本線に乗り換える。東北本線は通常通り運行されているとのこと。石巻線と陸羽東線が運休しているので駅はごった返していたが、私をそれを横目に東北本線上りホームへと急いだ。18:48発の仙台行きが私がホームに入るとともに入線した。ここまでくれば、家まで帰れる目処がついたが、JRバスに乗った連中は、この東北線には間に合わなかっただろう。
以上、1日に2回代行輸送にお世話になることになったが、宮古駅の手配の早さには驚いたし、気仙沼線の場合も、列車運行中に無線で連絡を取り、3台のバスを1時間程度で手配できるのは相当なものだ。乗客の中で、大きな不満をぶつける人もなく、きわめて平穏だったのは、そのあたりの手際よさもあった。タクシーやバスで代替できる人数だからよかったが、先ほどの書いたが東京ではこうは行かない。
それにしても、今後の旅行は大雨が予想される場合は、早め早めの行動が必要で場合によってはローカル線乗りはあきらめて、早く帰ることを選ぶ必要があるかもしれない。今回はJRの手配もよく何とか家にたどり着いたが、こんなスムーズにいくことは早々ないかもしれない。実際、小牛田駅ではこの駅から石巻線や陸羽東線に乗り換えようとする客が、運行再開を待って駅構内で駅員を取り囲んで騒然としていた。
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